優しさの陰に潜むもの
1997年のブループラネット賞を受賞した
科学者のジェームズ・ラヴロック博士が、
『地球生命圏』という著作において、
「ガイア仮説」と呼ばれるものを述べています。
それは、「地球とは、一つの巨大な生命体である」との仮説であり、
ギリシア神話における大地の女神
「ガイア」に由来して命名されたものです。
このラヴロック博士が、
1998年に上梓した『ガイアの思想』という著作の中で、
興味深いことを述べています。
ガイアには、自己治癒力があります。
ガイアは、その歴史を通じて、
多くの災害に遭遇してきています。
半径が10マイルもあるような巨大な隕石が、
いくつも地球に衝突しています。
90パーセントもの種を滅亡させた隕石もありました。
しかし、ガイアは、常に回復してきました。
ガイアが強大な自己治癒力を備えていることは、
こうした事実によって実証されています。
ですから、私たちが何をしようと、
ガイアが破壊されるようなことは絶対にありません。
そんなことができると考えること自体が、
私たちの傲慢であり、誤ったプライドにすぎません。
しかし、人類が、
自ら築いた文明を破壊してしまう可能性は
十分にあります。
このラヴロック博士の言葉を聞くとき、我々は、
最近の環境ブームの中でしばしば使われる
あの言葉に潜む落とし穴に気がつきます。
地球に優しく。
その美しい響きの言葉の陰に潜む
「善意の傲慢」に、気がつくのです。
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