我々を裏切るもの
かつて、ブルガリアで「建国の父」と呼ばれ、
第二次世界大戦における反ファシズムの戦いの英雄であった
ゲオルギ・ディミトロフが、次の言葉を残しています。
次にファシズムがやってくるとき、彼らは、
「反ファシズム」を掲げてやってくるだろう。
このディミトロフの言葉は、
全体主義的な政治勢力の持つ
「大衆宣伝の巧みさ」に警鐘を鳴らした言葉に聞こえます。
しかし、第二次大戦後に彼が建国した
ブルガリアという社会主義国が、
それからの数十年間に歩んだ道を振り返るとき、
我々は、このディミトロフの言葉に、
深いアイロニーを感じざるを得ません。
そして、その感懐とともに、
彼の言葉が真に意味しているものに気づくのです。
この言葉は、全体主義的な政治勢力の
「大衆宣伝の巧みさ」に警鐘を鳴らしたものではありません。
この言葉は、全体主義的な政治勢力に無防備な
「大衆意識の危うさ」に警鐘を鳴らしたものだったのです。
自分自身ではなく、
自分以外の誰かが、
この国を変えてくれる。
我々の中に根深く存在する
その「依存心」を土壌として、
いつも我々は、
我々を裏切るものを育ててしまうのです。
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