「善意」の帰結
宗教的対立を背景に、
テロと戦争の連鎖が続く
近年の世界情勢を見るとき、
ある歴史小説家が語った言葉が、
思い起こされます。
あなたは、なぜ、
ヒトラーやムッソリーニなど、
歴史的に悪名高い独裁者さえも、
一人の人間として描こうとするのですか。
その問いに対して、
小説家は答えました。
どのような独裁者や専制君主のなかにも、
一人の人間としての善意があり、
その善意が、恐ろしい結果をもたらしたからです。
たしかに、歴史を振り返れば、
どのような独裁者も専制君主も、
人々から熱狂的に支持された時代を持ち、
人々に語る言葉の多くは、
善意に満ちていた。
そのことを思うとき、
かつて、カール・マルクスが
『資本論』において語った言葉が、
心に浮かびます。
「地獄への道は、善意で敷き詰められている」
なぜ、人々の善意から発した行為が、
最悪の社会を生み出してしまうのか。
その問いは、21世紀、
我々が答えを見出すべき
最も大切な問いなのかもしれません。
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