「人生」の主人公
映画監督、マイク・ニコルズが
1967年にアカデミー賞・監督賞を受賞した
青春映画の名作、『卒業』は、
その感動的なラストシーンで知られています。
ダスティン・ホフマン演じる青年ベンが、
キャサリン・ロス演じる恋人ヘレンの
結婚式場まで駆けつけ、
新郎と親族の目の前で彼女を奪い返し、
バスに飛び乗って去っていくという
ラストシーンです。
最後に二人が見つめあい、
バスが去っていくラストシーン。
そのシーンに流れる
サイモンとガーファンクルの歌、
「サウンド・オブ・サイレンス」は、
観客の心に、甘く切ない余韻を残します。
しかし、学生時代、
何人かの友人たちとその映画を観て、
一緒に映画館を出るとき、
ふと、一人の友人が、つぶやきました。
結婚式の日に、新婦を奪われて、
あの新郎は、どんな気持ちになっただろうか。
真面目な表情で、その言葉を語る友人に、
他の友人たちは、楽しそうに笑いました。
この物語において、新郎は、主人公の脇役。
この物語の主人公は、青年ベンだからです。
しかし、それから歳を重ねるにつれ、
ときおり、彼の言葉を思い起こします。
なぜなら、この言葉は、
我々が、しばしば忘れてしまう
大切な真実を、思い出させてくれるからです。
人生は、物語ではない。
そこでは、自分以外の人々も、
自分が主人公の人生を、生きている。
感想を送る
皆さんからのメッセージをお待ちしています。ご意見やご感想をお寄せください。「風の便り」へのご意見や感想は、田坂広志の個人メールアドレスにお送りください。
友達に紹介する
この「風の便り」は、皆さんの友人や知人の方へも、遠慮なく送って差し上げてください。
ささやかな縁と共感の輪が広がるならば、幸いです。
風の便り 配信登録
「風の便り」の配信を希望される方は、こちらをご覧ください。