「忘却」という配剤
ロビン・ウィリアムス主演のSF映画、
『ファイナル・カット』は、
未来社会の不思議な物語を通じ、
我々に、大切なことを教えてくれます。
この未来社会においては、
すべての人間が、生まれたときから、
頭脳にメモリーチップを埋め込まれ、
その人生において、見た光景、聞いた音声が
すべて記録されています。
そして、一人の人間が死んだときには、
メモリーチップの膨大な記憶を取り出し、
その人生の美しい場面だけを編集し、
遺された人々に見せるのです。
しかし、主人公のウィリアムスは、
その記憶の編集をすることが仕事であり、
そのため、それぞれの人間の持つ
陰の部分や隠された世界を
知ってしまうという立場にあります。
そして、それゆえ、
彼は、悩み、苦しみます。
現在の情報技術の進歩を考えるならば、
近未来において、実際に起こり得る物語。
すべてが「記憶」され、
決して「忘却」されることのない世界。
この映画を観るとき、我々は、
改めて、一つの真実に気がつきます。
忘却とは、
天が与えた配剤。
忘却があるから、我々は、
今日を、生きていける。
忘却があるから、我々は、
過去を忘れ、
未来に向って、生きていける。
そのことに、気がつくのです。
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