「悪い成功」と「良い失敗」
元西武監督の広岡達朗氏が、
プロ野球のテレビ中継で、
解説者を務めていたときのことです。
その試合中に、ある外野手が、
大飛球を見事なダイビングキャッチでアウトにするという、
素晴らしいファインプレーをしました。
それは、素人目には、
まったく見事なプレーでした。
アナウンサーも、
「ファインプレーでしたね!」と、
解説者の広岡氏に相づちを求めます。
しかし、広岡氏は、
渋い表情で、こう言いました。
あのファインプレーは、
悪いファインプレーです。
そもそも、あの選手は、
この場面での守備位置が間違っている。
だから、自分のいないところに球が飛んでくる。
たまたま、ファインプレーになったから結果オーライですが、
あれは、悪いファインプレーです。
「なるほど」と思いながら、
さらにその試合をテレビで見ていると、
今度は、ある内野手が、
飛んでくる強いゴロを捕球できずにエラーをしました。
そのとき、アナウンサーからコメントを求められた広岡氏は、
こう答えました。
あのエラーは、
仕方がない。
あの場面で、あの選手の守備位置は正しかった。
たまたま判定はエラーになりましたが、
あの強いイレギュラー気味のゴロを捕れなかったのは、
仕方がないでしょう。
あれは、良いエラーです。
これは、深く考えさせられるエピソードですが、
経営者やマネジャーに、
一つの難しい問いを投げかけます。
たしかに、ビジネスの世界にも、
「悪い成功」と「良い失敗」がある。
では、我々は、
部下の成功や失敗を前に、
「それは悪い成功だ」
「それは良い失敗だ」と、
信念を持って語れるか。
このエピソードは、
その問いを投げかけてくるのです。
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