「戦略思考」の要諦
学生時代、友人に空手の有段者がいました。
あるとき、彼が、素手で瓦を割るのを見せてくれました。
彼の突き出した拳で
一撃のもとに瓦が割れたのを見て感心していたら、
「君もやってみろ」と言います。
スポーツで鍛えた体に多少の自信はあったので、
試しに、彼の拳の打ち方を真似して、
力を込めて瓦を打ってみました。
しかし、瓦は割れず、拳がしびれるように痛い。
そのとき、彼の語った言葉が、いまも心に残っています。
君、それでは瓦は割れないよ。
なぜなら、君は瓦の表面を狙って打っているからだ。
もし、瓦を割りたかったら、瓦の表面ではなく、
表面のその先、数センチ奥を狙って打たなければ駄目だ。
そのとき、瓦の表面での破壊力が最大になるのだよ。
彼の言葉に従って、すぐに、
瓦が割れるようになったわけではありません。
しかし、この言葉は、それからの長い歩みの中で、
ときおり、深い意味を持って思い起こされました。
なぜならば、
これは、「空手の極意」を語っている言葉ではなく、
「戦略思考の要諦」を語っている言葉だったからです。
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