「人工」という「自然」
『ソラリスの陽のもとに』というSF小説で有名な
ポーランドの作家、スタニスワフ・レムが、
あるエッセイの中で、興味深い話を述べています。
我々が山道を歩いているとき、蟻塚を発見したとします。
そのとき、我々は、その蟻塚というものを、
自然の営みがつくった面白い構造物であると感じます。
それを決して「蟻工物」とは考えません。
あくまでも自然が生み出したものであると考えます。
我々にとって、蟻とは自然の一部だからです。
これに対して、我々は、
人類がつくった都市という構造物を見ると、
それを「人工物」と考えます。
我々は、自分自身を、
自然を超えた何かだと思っているからです。
しかし、もし高度な文明を持つ宇宙人が地球に到来して、
人類のつくった都市を見たならば、
彼らは、我々が蟻塚を見て感じるように、
それを、地球上に芽生えた生命がつくりだした物であり、
自然の営みがつくった構造物であると感じるかもしれません。
これが、スタニスワフ・レムのイマジネーションです。
そして、このイマジネーションは、
かつて、ノーベル賞科学者、イリヤ・プリゴジンが語った、
次の言葉を思い出させます。
我々は、自然から分かれて、
なおかつ自然の一部である。
我々が、それを、どれほど「人工」であると考えても、
実は、それは、「自然」の営みに他ならないのです。
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