この一瞬の重み
将棋の羽生善治棋士が、かつて、
ある対談で、次のように述べています。
いまでは、パソコンを使って、
簡単に棋譜研究をすることができます。
しかし、興味ある局面は、
実際に駒を使って盤に並べてゆっくり考えます。
駒を盤に並べて見るのは、
パソコンだと、
クリックするだけで次々と進んでいきますから、
次を早く見たいという気持ちで駒を進めてしまって、
その一手の重みを実感できないからです。
パソコンで棋譜の研究をしていると、
どうしても、この先を早く見たいと思ってしまって、
自分で考えることをしなくなるのです。
この羽生棋士の言葉は、
決して将棋の世界だけを語っている言葉ではありません。
「この先を早く見たい」という願望が、
いまの世の中には、溢れています。
そして、その願望のために、
我々は、
大切なことを忘れてしまうのです。
「この先を早く見たい」と思うあまり、
「この一瞬の重み」を忘れてしまうのです。
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