意図された創発
かつて、1990年代、
最先端科学である「複雑系」(complexity)の理論を
企業組織のマネジメントに生かすための研究が
アメリカを中心として、精力的に行われました。
そして、この研究において鍵となった言葉に
「創発」(emergence)という言葉があります。
これは、企業組織などで、
個々のメンバーは自由かつ自発的に行動しているにもかかわらず、
誰が意図しなくとも、
自然に秩序だった組織活動や組織形態が生まれる現象のことです。
しかし、このアメリカの複雑系マネジメントの研究において
当時、注目された言葉は、極めて興味深い響きを持っています。
Intentional Emergence
これは、「意図された創発」と訳される言葉ですが、
東洋思想における「絶対矛盾」を思い起こさせるものです。
意図せぬ創発を、意図的に起こす。
こうした「論理」では割り切れぬ「矛盾」に満ちた言葉が、
科学的なマネジメント論として真剣に語られている。
そのことに、当時のアメリカの経営学が
提唱しようとした思想の「深み」を感じます。
本来、東洋思想を土壌とする日本において
提唱されるべき思想を、
西洋文化の最先端にありながら、先取りする。
それが、アメリカの西海岸や
シリコンバレーの文化が、ときおり見せる
不思議な魅力であり、器の大きさなのでしょう。
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