「未来」に書かれたもの
名作映画『アラビアのロレンス』の中で、
ピーター・オトゥール演じる、英雄ロレンスが、
アラビア人兵士の部隊を率い、
灼熱の砂漠を越えて進軍する場面があります。
このとき、兵士の一人が疲労困憊のために落馬し、
砂漠に一人取り残されてしまいます。
部隊が砂漠を渡り終えたとき、
そのことに気がついたロレンスは、
その兵士を助けに行こうと
自身も疲労困憊した体に鞭打って、
単身、灼熱の砂漠に引き返そうとします。
そのとき、アラビア人の兵士の一人が、
それを止めようと、言います。
It is written.
彼が砂漠で死ぬことは、宿命だ。
そのことは、コーランに、
既に書かれている。
その言葉に耳を貸さず、ロレンスは砂漠に引き返し、
九死に一生を得る形で、その兵士を助け出します。
そして、部隊に戻ってきたロレンスは、
精根尽きて倒れ込む前に、
静かに、しかし、力強く語ります。
Nothing is written.
何も書かれてはいない。
我々の歩む未来には、何も書かれてはいない。
それが、この世界の真実であるにもかかわらず、
我々の心の奥深くに宿る「生の不安」は、
そのことを、受け容れられないのです。
そして、そのことが、実は、
我々の「生の輝き」であることに、
気がつかないのです。
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