スーパージェネラリスト
アメリカのニューメキシコ州の片田舎に、
現代科学の最先端のテーマ、「複雑系」を研究する
サンタフェ研究所があります。
世界的に知られるこの研究所では、1990年代初頭、
物理学、生物学、心理学、政治学、経済学、社会学など
様々な分野の専門家が世界中から集まり、
広汎な学際的研究が行われていました。
かつて、このサンタフェ研究所を訪問したとき、
初代所長のジョージ・コーワン博士に会う機会を得ました。
そのとき、博士の語った言葉が、心に残っています。
「世界中からノーベル賞級の研究者が集まる
このスペシャリスト集団をマネジメントするために
どのような人材が必要なのでしょうか」
その問いに対して、コーワン博士は、ただ一言で答えました。
「スーパージェネラリストです」
なぜ、博士のこの一言が、深く心に残っているのか。
それは、博士の語る「スーパージェネラリスト」とは、
単に、様々な分野の知識を幅広く理解している人材
という意味ではなかったからです。
「スーパー・ジェネラリスト」とは、
一つの専門分野を深く掘り下げた経験を持ち、
その結果、すべての分野に通じる
深い叡智を獲得した人材のことだったからです。
一芸に徹すれば、万般に通じる。
その古き日本の諺のごとく、
我々の叡智を求める営みは、
あたかも「井戸水」のように、
一つの場所を深く掘り下げていけば、
必ず地下水脈に突き当たり、その地下水脈は、
どこまでも横に広がっている。
西洋科学の最先端が求める「スーパージェネラリスト」
それは、東洋思想における
叡智の在り方に通じる言葉でもあったのです。
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