「インキュベーション」の思想
いま、ベンチャー育成を重視する政策のもとで、
「インキュベーション」という言葉が
ふたたび注目されています。
本来は「卵を孵化させる」という意味の英語ですが、
転じて、
新しい事業の卵を見出し、
資金、計画、人材、知識、施設など、
事業が育つための条件を整えることによって、
新しい事業を孵化させる。
その意味に使われる言葉です。
しかし、
ベンチャー育成の手法として欧米で使われ始めた
この「インキュベーション」という言葉。
その意味を考えるとき、
我々は、不思議なことに気がつきます。
生命論的思想への回帰。
西洋の機械文明の発展のなかから生まれてきた
この「インキュベーション」の思想が、
本来、事業というものが持つ「生命力」を信じ、
それをいかに支援することができるかという
生命論的な思想であることに、気がつくのです。
そして、そのことに気がつくとき、我々は、
この「インキュベーション」における最も大切な心得が、
すでに、東洋の生命論的思想において語られていることを
知ります。
卒啄の機。
雛鳥が、まさに卵から孵らんとする、その一瞬、
親鳥が、卵を突き、雛鳥は殻を破って生まれてくる。
その機の大切さを、
東洋の思想は、すでに語っているのです。
2003年10月20日
田坂広志
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