心の力を求める経済
これから市場や社会で何が起こるのか。
そのことを考えるとき、
一つの古い哲学を思い起こします。
ドイツ観念論の哲学者、ヘーゲルが語った
「事物の螺旋的発展」の思想です。
歴史は、螺旋階段を登るようにして発展していく。
横から見ていると、上に登っていくが、
上から見ていると、元に戻ってくる。
この歴史の弁証法の視点から見るとき、
たしかに、いま、市場や社会において、
「懐かしい何か」が復活しつつあることに気がつきます。
例えば、ネット革命によって、市場に復活した、
「競り」や「指値」という取引のスタイル。
Eラーニングによって、教育の世界に復活した、
「私塾」や「寺子屋」という学びのスタイル。
いま、多くの物事が、螺旋的な発展による
未来進化と原点回帰を遂げつつあるなかで、
経済の世界でも、一つの回帰が生じています。
ボランタリー経済。
物と物を交換する「交換経済」でもなく、
貨幣を媒介とした「貨幣経済」でもなく、
善意や好意から無償で相手に何かを贈る
「贈与経済」。
いま、ネット革命の大きな潮流の中で、
その懐かしい経済が復活しつつあります。
しかし、ボランティア活動やコミュニティ活動を通じて
この「贈与」という営みを行うとき、
我々は、その心の置き所の難しさを感じるとともに、
貨幣経済という効率的なシステムが、
我々から、大切なものを奪ってしまったことに
気がつきます。
いま、相手が何を欲しているかを
深く、細やかに感じ取る、
心の力。
その力が失われてしまったことに、
気がつくのです。
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