クローン人間の自我
もし、いま目の前に、
自分のクローン人間が現れたならば、
我々は、その姿に、何を見るのでしょうか。
クローン人間。
遺伝子工学によって生み出された、
自分とまったく同じ遺伝子を持った、
もう一人の自分。
その相違は、
これまでの年月に与えられた環境の違いと、
その環境の中で与えられた経験の違いだけ。
そのクローン人間を見つめるとき、
おそらく、我々は、
一つの言葉を胸に浮かべるのでしょう。
「可能的自我」
言葉を換えれば、
「もう一つの人生を歩んだときの自分の姿」
もし、人生において、
これまでとは違った環境が与えられ、
これまでとは違った経験が与えられたならば、
そのようになったであろう、自身の姿。
我々は、自身のクローン人間の中に、
その「可能的自我」を、
否定しがたい事実として、見るのでしょう。
しかし、そうした空想的な思索を巡らすとき、
その思索の深まりの中で、我々は、
ふと、一つの真実に気がつきます。
同じ人間として生まれ、
異なった人生を生きる、すべての人々。
その姿もまた、本当は、
我々の「可能的自我」であることに
気がつくのです。
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