宇宙ダーウィニズム
この宇宙は、どのようにして生まれたのか。
その問いに、現代科学の「インフレーション宇宙論」は、
次のように答えています。
137億年前、この宇宙は、存在しなかった。
ただ、エネルギーに満ちた「真空」だけが、存在した。
しかし、その真空が、あるとき、「ゆらぎ」を生じ、
一瞬にして大膨張を起こし、一つの宇宙を生み出した。
そして、この「真空」は、次々と「ゆらぎ」を生じ、
無数の宇宙を誕生させていった。
しかし、そうして誕生した無数の宇宙、
数々の「ベイビー・ユニバース」の中で、
その宇宙が生まれ持った自然定数、光速や重力などの値が、
最適の組み合わせでなかったものは、すぐに消滅してしまった。
そして、我々の生きるこの宇宙は、
なぜか、最適の値を持って生まれたため、
こうして存続し、137億年の進化を続けている。
これが、「宇宙ダーウィニズム」と呼ばれる理論であり、
生物の進化における「ダーウィン理論」と同様の、
宇宙の進化における「適者生存の理論」です。
そして、この宇宙論が描く宇宙創生の姿は、
あたかも、水を加熱するときの気泡の姿に似ています。
加熱とともに、水中に無数の気泡が生まれ、
次々と大きな泡へと成長し、そして、すぐに消えていく。
そうした姿が、心に浮かびます。
次々と生まれ、消えていった、数多くの気泡。
その中で、奇跡的に生き残った、一つの気泡。
その気泡が137億年の歳月をかけて、
その胎内に生み、育てた、我々の生命。
その意味を考えるとき、
しばしば使われる、一つの言葉の
想像を超えた深淵に、気がつきます。
「生命の奇跡」
この言葉の、底知れぬ深淵に、気がつくのです。
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