「志」と「野心」
学生時代、北海道大学を訪れたとき、
多くの人々が知る銅像を見ました。
大学の前身、札幌農学校の創設者であり、
マサチューセッツ農科大学の学長でもあった、
ウィリアム・スミス・クラーク博士の銅像です。
その像の下には、
クラーク博士の残した有名な言葉が
英語で書かれていました。
Boys, be ambitious!
「青年よ、大志を抱け」と訳され
人々に語り継がれてきたこの言葉を見たとき、
その翻訳の巧みさに感心しながらも、
この言葉の持つ「危うさ」を感じました。
なぜなら、この「ambitious」という言葉には、
正反対の二つの意味があるからです。
「理想」や「使命感」に支えられた
「大志」や「大望」
「功名心」や「権力欲」に支えられた
「野心」や「野望」
不遇の晩年を送ったクラーク博士ですが、
もとより、その本意は前者にありました。
しかし、いま、世の中を見渡すとき、
この言葉の持つ「危うさ」が
現実となっていることに、気がつきます。
「志」と称して、「野心」を語る。
その錯誤が、
いま、世に溢れていることに
気がつくのです。
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