二つの「意欲」
何年か前、ベンチャー・ビジネスに関する
シンポジウムに出席したときのことです。
「なぜ、日本ではベンチャーが生まれないのか」
そのテーマを巡る議論の中で、
ある経営者が、熱い口調で、こう語りました。
みんな、もっとハングリーにならなければ。
そうしなければ、
日本に、ベンチャーは生まれないですよ。
この言葉に大きく頷く参加者の姿も
少なくありませんでしたが、
その姿を見ながら、
なぜか、別の思いが浮かんできました。
半世紀を超えて戦争の無い平和な時代が続き、
世界有数の経済力を誇る国。
最先端の科学技術を享受し、
高齢社会が問題となるほど健康長寿に恵まれ、
国民の多くが高等教育を受ける国。
世界でも有数の豊かさを享受しているこの国で、
なぜ、我々は、いまもなお、
ハングリーさによってしか、
自らを行動に駆り立てることができないのか。
その思いを抱くとき、我々は、
大切なことに気がつきます。
我々が心に抱く「意欲」には、二つの意欲がある。
一つは、「欠乏感」から生まれてくる意欲。
一つは、「感謝」から生まれてくる意欲。
その「感謝の意欲」によって新たな事業に取り組む時代。
我々は、そうした時代をこそ、
切り拓いていかなければならないのでしょう。
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