西洋から学ぶ東洋思想

かつて、宗教学者の中沢新一氏と
ある雑誌で、対談をしたときのことです。

様々な著書を通じて、
広く仏教の思想を紹介してきた中沢氏が、
こう語っていました。

　最近、アメリカの仏教学者と会うと、
　いま、仏教研究の中心は、アメリカにある
　と言われるのですよ。

　このままでは、我々は、
　仏教精神の真髄を
　アメリカから学ぶことになるかもしれません。

この中沢氏の言葉を聞いたとき、
思いました。

　それは、すでに起こっている。

ユング心理学の集合的無意識から、「阿頼耶識」を知り、
トランスパーソナル思想から、「自他一体」を学び、
複雑系科学の研究から、「悉有仏性」に気づき、
宇宙物理学の量子真空の理論から、「空即是色」を悟る。

我々は、いつも、
西洋の思想や科学を通じて、
東洋の思想や宗教の真髄にある
深い洞察と叡智を知るのです。

その逆説に気づくとき、
一抹の寂寥とともに、
一つの思いが、心に浮かびます。

我々は、なぜ、
足下の肥沃な大地に目を向けず、
渡来の果実に糧を得ようとするのか。