「死」とは、何か
2007年5月、
『未来を拓く君たちへ』という著書の英語版
『To the Summit』が出版されたとき、
サンフランシスコの書店で、
出版記念講演会が開催されました。
この著書のメッセージは、死生観。
人は、必ず死ぬ。
人生は、一度しかない。
人は、いつ死ぬか分からない。
その「三つの真実」を語った著書のメッセージを
日本の「禅の思想」に重ねて論じたこの講演。
講演が終わった後、
講師に対する質問が求められたとき、
最前列に座っていた初老の男性が、
静かに手を挙げました。
穏やかな風情の奥から、
人間としての深みと風格を感じさせるその男性は、
ただ一言、
究極の質問を投げかけてきました。
「死」とは、何か?
講師の力量を試すかのような、極限の問い。
一瞬の呼吸の後、心に浮かんだ言葉を、静かに答えました。
その問いの答えを知りたいのであれば、
もう一つの大切な問いを、問われるべきでしょう。
「私」とは、何か。
その問いです。
その答えに対して、初老の男性は、
静かに微笑み、
ただ一言、「Thank you」と答えました。
サンフランシスコ禅センターで、
永年の修行をされたのかと思われるその男性の
深い眼差しが、
いまも、心に残っています。
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