「やまあらし」のジレンマ
あるところに、
二匹のやまあらしがいました。
冬の朝、とても寒いので、
二匹のやまあらしは、
互いに暖めあおうとして、
身を寄せあいました。
しかし、あまりに近く身を寄せあったため、
二匹のやまあらしは、
自分の体に生えているハリによって、
互いに相手を傷つけてしまいました。
その痛みから、
二匹のやまあらしは、
相手から離れたのですが、
今度は、また、
寒くてたまらなくなりました。
そこで、ふたたび
二匹のやまあらしは、
身を寄せあいました。
すると、また、
互いに相手を傷つけてしまうのです。
こうして二匹のやまあらしは、
離れたり、近づいたりを繰り返し、
ようやく、
最適の距離を見いだしたのです。
これは、かつて、哲学者ショーペンハウエルが語った、
「やまあらしのジレンマ」という寓話です。
この寓話を読むとき、
一つの問いが、浮かびます。
我々の「こころ」は、
「寒さ」と「痛み」のジレンマの中でしか、
「最適の距離」を見いだすことができないのでしょうか。
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