「地図」と「現実」
ヨーロッパのある国で
庶民の中で語り継がれている
貴族についての笑い話があります。
ある日、その国の貴族たちが集まって、
山登りに出かけました。
しかし、集まったメンバーは、皆、
実際の山登りの経験が無かったため、
途中で、道を見失ってしまいました。
そこで、現在、自分たちがいる場所を知るために、
全員で地図を広げ、検討を始めました。
しかし、あいにく、この貴族たちは、
皆、学者や知識人だったため、
その検討は、まもなく、
喧々諤々の議論になりました。
そして、延々と激しい議論を続けた結果、遂に、
その知識人のなかでも、最も賢いメンバーが、
遠くの山の頂を指差しながら、
誇らしげに言いました。
我々のいる場所が、分かったぞ。
この地図によれば、
いま、我々は、
あの山の頂上にいる。
この笑い話は、実は、
笑えない話かもしれません。
なぜなら、いま、我々の社会には、
こうした錯誤が溢れているからです。
「地図」という理論の世界だけで考えるあまり、
「現実」の世界にいることを忘れてしまう。
その錯誤が、溢れているからです。
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