青空を仰ぎ見る日
ときおり、大学時代に邂逅を得た
恩師のことを想い出します。
その恩師は、教育と研究に生涯を捧げた学者でしたが、
その定年退官の日の記念会合が、心に残っています。
そのとき、会合の最後の挨拶で、
恩師は、こう語りました。
本日、研究室のメンバーに見送られ、
永年働いた建物を後にしました。
キャンパスの道を歩きながら、空を見上げると、
素晴らしい青空でした。
そのとき、私は、気がつきました。
ああ、自分は、この青空を見たことがなかった。
大学に奉職して30年、
教育と研究に、生活のすべてを捧げて歩んできました。
そのため、私は、この素晴らしい青空を、
30年間、心から楽しんだことがありませんでした。
しかし、ようやく、私にも、
この青空を見ることのできる日が、やってきました。
静かに語るその言葉を耳にしたとき、
全身全霊で、弟子に学問の道を教え、
自ら研究の道を歩み続けた恩師の姿が
懐かしく目に浮かびました。
そして、同時に、
一つの思いが、心に浮かびました。
人生を賭し、
力を尽くして歩んだ後に仰ぎ見る「青空」
いつか、自分も、その「青空」を見たい。
その思いが、心に浮かんだのです。
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