若き日のこだわり
2001年の映画『トレーニング・デイ』で、
アカデミー賞・主演男優賞を受賞した
黒人映画俳優、デンゼル・ワシントンに、
興味深いエピソードがあります。
彼は、俳優としての道を歩み始めたとき、
一つのこだわりを持っていました。
黒人のイメージを良くする映画だけを、引き受ける。
そのこだわりでした。
しかし、そのために、
ある映画の出演を断ったとき、
数ヶ月、仕事が来なくなりました。
悩んだ彼は、
先輩の黒人映画俳優、
シドニー・ポアチエに相談しました。
かつて1963年の『野のユリ』で
やはり主演男優賞を受賞した先達、
ポアチエは、
こう答えたそうです。
それでよい。
初期の作品は、
その後の進路を決めてしまうのだから。
若き日の、作品に対するこだわりが、
その作家の、生涯の歩みを決めてしまう。
そのことの
素晴らしさと、怖さを、思います。
なぜなら、
我々が、そのことに気がつくのは、
永き歳月をかけて道を歩み、
その道の彼方で、
ふと、振り返ったときだからです。
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