マジックを求める心
かつて、英国のサッチャー元首相が来日したとき、
その記念講演会に招かれました。
明確な思想と強い信念を持ち、
国内の多くの抵抗に遭いながらも
英国における困難な改革を成し遂げたサッチャー氏は、
その静かな話し振りの奥に、
確かな気骨を感じさせる人物でした。
しかし、その講演の後、
出席者からの質問を受けたとき、
我が国の著名な識者の一人が、
ある質問をしました。
サッチャーさん。
日本は、いま、長く経済的低迷の時期にありますが、
もしあなたが、日本の首相であったなら、
どのようにして、この国の建て直しをされますか。
その質問に対して、
サッチャー氏は、質問者の心を感じ取ったのでしょうか、
それまでの穏やかな表情を変え、
厳しい口調で、はっきりと答えました。
もし私が日本の首相ならば、
打つべき手は、あります。
しかし、そのことを申し上げるよりも、
大切なことを申し上げましょう。
政治に、マジックは無い。
そのことを理解されるべきでしょう。
難しい問題に直面したとき、
いつも、このサッチャー氏の言葉を思い出します。
なぜなら、我々が困難な問題と格闘するとき、
その戦いの相手は、問題そのものではないからです。
マジックを求める、安易な心。
それこそが、本当の戦いの相手だからです。
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