才能を生かす才能
学生時代、
演奏家としての道を志す友人がいました。
まだ無名の時代に、
彼が、呟くように
語っていた言葉を思い出します。
自分の才能を信じられなければ、
この道は歩めないよ。
その友人と、二十年の歳月を経て、会いました。
彼は、演奏家として、
すでに、社会的な名声を得ていました。
久しぶりに聞いた演奏に感銘を受け、
昔を思い出し、彼に言いました。
君には、やはり才能があったのだね。
その言葉に対して、
彼は、ためらいながら、語りました。
自分には才能がある。
そう思ってしまうことが、
怖いことなのだね。
二十年の歳月を経て語られた
正反対の二つの言葉。
その言葉を前に、思います。
己の才能を、信じるべきときに、信じ、
過信すべきでないときに、過信しない。
そのバランス感覚こそが、
才能を生かす才能、なのかもしれません。
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