死を前にした「受容」
数多くの人々の死を看取り、
その記録、『死ぬ瞬間』という書によって、
終末医療の思想に深い影響を与えた精神科医、
エリザベス・キューブラー・ロス。
彼女は、2004年8月24日、
その78歳の生涯を閉じました。
引退後、脳卒中で倒れた彼女は、
その人生の最後の9年間、
不自由な体で病床に伏せる生活を余儀なくされます。
テレビのドキュメンタリーが伝える
その晩年の彼女の姿。
それは、意外にも、
自分の病気や境遇を嘆き、
自分を愛することのできない自分を語り、
感情の起伏に身を委ねて周囲に接する姿であり、
彼女に聖女や聖人の姿を重ねる人々にとっては、
その期待を裏切るものでした。
しかし、
彼女が、その著書で語った通り、
病で死に向かう人々の誰もがたどる
否認、憤怒、取引、抑鬱、受容という5つの段階を、
彼女自身も、正直に歩んだことに、
我々は、むしろ、
不思議な安堵を覚えます。
そして、その安堵とともに、
自分の「死」を受け容れる、という意味で語られた
「受容」という言葉の
本当の意味に気がつきます。
自分の「弱さ」を受け容れる。
それは、
彼女が最後に残した言葉が、
意味するものだったのでしょう。
私は、いま、
自分を愛することを
学んでいる。
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