表現の絶対矛盾
『もののけ姫』や『千と千尋の神隠し』などの作品で、
世界から注目を集めた、アニメ映画の宮崎駿監督が、
試写会後のインタビューで語っていた言葉が
心に残っています。
映画を観られるというのは
辛いものです。
多くの人々の前を
裸で歩いているようなものですから。
この言葉を聞くとき、
宮崎氏ほどの優れた表現者が、
表現という行為に対する
恥じらいとためらいを持っていることに、
静かな驚きを覚えます。
しかし、この言葉を深く味わうとき、我々は、
表現という行為の生命力が
どこから生まれてくるかを、知ります。
自己の内面を表現することの恥じらいと、
自己の深奥からの声を伝えたいとの思い。
その葛藤と拮抗こそが、
表現という行為が持つ絶対矛盾であり、
生命力なのでしょう。
しかし、その葛藤を続けることは、難しい。
そして、表現における恥じらいを忘れたとき、
我々を待ち受けているものが、ある。
自己陶酔
それは、自己表現という道の傍らに
いつも存在する
目に見えない落し穴なのでしょう。
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