大僧正の母
平安時代の天台宗僧侶、
七高僧第六祖とされる恵心僧都。
源信の名でも知られ、
『往生要集』を著したことでも知られる
この大僧正に、
後世に語り継がれた
母との物語があります。
信仰心に篤い母の導きで
9歳で比叡山に登り仏門に入った源信は、
その学名を高く評価され、
15歳のとき、村上天皇の前で「法華経」を講じ、
その褒美として、数々の品と、僧都の位が与えられました。
それを喜んだ源信は、
故郷の母に、その褒美の品を送ったところ、
母は、その褒美の品を送り返し、
添えられた手紙に、一つの和歌が書かれていました。
後の世を渡す橋とぞ思いしに、
世渡る僧となるぞ悲しき
この母の手紙を読み、
名利を求める己の心に気がついた源信は、
仏道の精進を心に定め、念仏三昧の日々を送り、
30数年後、その母は、念仏を唱える源信の膝を枕に
安らかな往生を遂げたといわれます。
母の死後、その供養のために著した
『往生要集』が、
後の浄土宗を通じ、多くの人々を救ったことは、
良く知られています。
この物語を読むとき、我々は、
一つの真実に気がつきます。
素晴らしき人生。
それは、
深き祈りを捧げた人間と
祈りを背に受けた人間が、共に創り上げる
一つの作品なのでしょう。
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