カルチェ・ラタンの若者たち
東京の御茶ノ水駅から、
神田の古本屋街に向かう道を歩くとき、
ふと、数十年の歳月を超え、
遠い彼方の記憶が蘇ってきます。
それは、1968年という政治の季節。
日本中の多くの若者たちが、社会の変革を求め、
激しい抗議行動を起こしていた時代のことでした。
その頃、この御茶ノ水から神田にかけての一帯は、
「カルチェ・ラタン」と呼ばれていました。
1968年にフランスのパリで起きた
学生・労働者を中心とした五月革命。
その革命の中心地であったのが、
セーヌ川左岸、パリ大学周辺の
「カルチェ・ラタン」と呼ばれる地区でした。
そのフランスの学生運動の中心地にちなみ、
この神田界隈で、そして、全国で、
大学の中にバリケードを築き、
「カルチェ・ラタン」と呼ばれる解放区を創ろうとした
多くの若者たちがいました。
しかし、すでに、そうした時代の面影さえ残っていない
この街を歩いていると、
ふと、一つの思いが、心に浮かんできます。
強固なバリケードを
大学の中に築こうとした、あの若者たち。
彼らは、本当のバリケードを
築くことができたのだろうか。
いかなる現実によっても
決して揺らぐことのない
強固な砦。
それを、何よりも、
自らの心の中に、
築くことができたのだろうか。
そして、彼らは、
気がついたのだろうか。
本当の戦いとは、
ひと夏の戦いではなく、
数十年の歳月を超えた戦いであることを。
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