習作の時代
遠い昔、
大学時代の恩師が語った言葉を
思い出します。
本を書くなら、「若書き」をすべきではない。
自分の中に、価値あるものを蓄え続け、
ある年齢に達し、
それが外に溢れるようになったとき、
自然に、本は生まれてくる。
一人の物書きとして歩みながら、
ときおり、この恩師の言葉を思い出します。
文章とは、深い世界。
そして、怖い世界。
どれほど、深い思索を巡らせ、
どれほど、心を込めて文章を書いたつもりでも、
やはり、その年齢相応の著者の境涯が
行間に表れてしまう。
その怖さを、思います。
顧みれば、
何かの縁あって、最初の本を上梓したのが、
43歳の秋。
そのときも、
この言葉を思い起こし、
恩師との、無言の対話を行いました。
そして、心の中で
恩師に伝えたのは、一つの言葉。
未だ、習作の時代。
歳を重ね、いつの日か、
本当のライフワークと呼ぶべき
著作に取り組むときが、来る。
その日までは、修行の時代。
一作、一作、真剣勝負を通じての
習作の時代。
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