謙虚さと感謝の「逆説」
かつて、臨床心理学者の河合隼雄氏と
対談の機会を得たとき、
人間が身につける謙虚さについて
話題が及びました。
そのとき、河合氏が、
いつものように飄々とした風情で
静かに語られた言葉が、
心に残っています。
人間、自分に本当の自信がなければ、
謙虚になれないのですよ。
その静かな言葉の奥にある、
人間洞察の鋭さに、
深い共感を覚えましたが、
河合氏は、さらに、
もう一つの言葉を続けました。
人間、本当の強さを身につけていないと、
感謝ができないのですよ。
たしかに、この二つの言葉は真実なのでしょう。
他人に対して尊大な姿勢を示す人物から、
その内面の自信の無さが伝わってくる。
他人に対して感謝のできない人物から、
その内面の弱さが伝わってくる。
そうした経験は、しばしばあります。
しかし、河合氏のこの言葉を深く味わうとき、
実は、この言葉が、
その逆の真実を教えてくれていることに、気がつきます。
他人に対して謙虚に処する行を続けていると、
いつか、深い自信が芽生えてくる。
他人に対して心から感謝する行を続けていると、
自然に、自分の心が強くなっていく。
そのことに、気がつくのです。
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