ムカデの自意識
「百足」と書いて「ムカデ」と読む。
この不思議な虫の、苦難の物語です。
ある暑い夏の日、
ムカデが一生懸命に歩いていました。
すると、通りかかったアリが言いました。
ムカデさん、凄いですね。
百本もの足を、
絡み合うこともなく、
乱れることもなく、
整然と動かして歩くなんて、
さすがですね。
その誉め言葉を聞いて、
ムカデは、ふと考えてしまいました。
なぜ、自分は、
これほどうまく
百本の足を動かせるのだろうか。
アリさんの言うとおり、
絡み合うこともなく、乱れることもなく、
なぜ、整然と動かして
歩くことができるのだろうか。
そう頭の中で考えはじめた瞬間に、
ムカデは、一歩も動けなくなってしまいました。
先ほどまで、何の苦もなく無意識に動かしていた足を、
一歩も動かすことができなくなってしまったのです。
このムカデの姿は、
我々の姿に、似ています。
自意識の病。
その病によって、
我々は、いつも、
力を発揮できなくなってしまうのです。
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