「変革の情熱」に潜むもの
昔、ロンドンの郊外のハイゲートという場所にある、
小さな墓地を訪れたことがあります。
その墓地の片隅には、
20世紀の歴史を変えた、一人の人物の墓が、
ひっそりと佇んでいました。
その墓碑銘に書かれていた、
一つの言葉を思い出します。
哲学者たちは、これまで世界を解釈してきたに過ぎない。
しかし、大切なことは、それを変革することである。
不思議な説得力を持った、この言葉。
この墓に眠る、カール・マルクスの言葉が
力強い「言霊」となって、
20世紀の世界を「変革の嵐」の中に巻き込んだのでした。
「社会主義革命」という嵐です。
しかし、この革命の壮大な歴史的実験は、
20世紀の最後に、脆くも挫折していきました。
いま、その歴史を静かに振り返るとき、
この魅惑的な言葉の奥深くに、
密やかな性急さが潜んでいたことに、気づきます。
この世界を変革すること。
我々は、しばしば、
そのことに情熱を奪われるあまり、
大切なことを、忘れてしまうのかもしれません。
この世界の理を知ること。
その大切さを、
忘れてしまうのかもしれません。
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