「砂絵」の絶対矛盾
チベット仏教に、砂絵曼荼羅というものがあります。
大切な儀式に際して、
仏教の僧侶たちが、
五色の砂を用い、七日間かけて、
極色彩の曼荼羅を描くのです。
この砂絵曼荼羅の儀式においては、
それを行う僧侶に、
超人的な集中力と忍耐力が求められます。
僧侶たちは、
驚異的な集中力と忍耐力によって、
一つ一つの砂粒に全身全霊を込め、
深い祈祷を捧げながら、
この砂絵曼荼羅を完成させていくのです。
しかし、この儀式が終ったとき、
チベット仏教の僧侶たちは、
この砂絵曼荼羅を
一瞬にして崩してしまいます。
そして、その砂を、川に流してしまうのです。
何日間もの長い時間をかけ、
膨大な精神のエネルギーを注ぎ込み、
心を込めて創り上げたその曼荼羅を、
何のためらいもなく、崩してしまうのです。
そして、流し去ってしまうのです。
その砂絵曼荼羅の儀式を見ていて、感じます。
そこには、我々の人生がめざすべき
究極の相が、ある。
全霊を込めて創り上げ、
無心の境地で流し去る。
その「絶対矛盾」の相が、あるのです。
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