本当の「商品」
若き日に、優れた上司から、
大切なことを学びました。
ある調査会社が、その上司に、仕事を求めてきたのです。
そこで、その会社の部長と担当者に会うことになりました。
しかし、先方との会合が始まっても、私の上司は、
その部長と雑談をするだけで、本題に入りません。
相手も、その雑談に、快く相づちを打つだけです。
そして、若い担当者は、黙って側に控えているだけです。
しかし、その担当者には、なぜか、眼光の鋭さを感じます。
妙に存在感があるのです。
そのうち、予定していた時間が過ぎました。
すると、上司は、
その雑談だけで、会合を終えたのです。
しかし、先方を見送って部屋に戻るとき、
その上司は、私に言いました。
あの会社に、例の調査を頼んだらどうかな。
突然の切り出しに、少し戸惑いながら、
私は聞き返しました。
しかし、あの会社の調査能力は、先ほどの会合では、
ほとんど分からなかったのですが。
そのとき、この上司が語った言葉が、忘れられません。
その点は大丈夫だろう。
あの若い担当者、
いい面構えをしていたからな。
このとき、私は、大切なことを学びました。
我々が、顧客から仕事を得るとき、
買って頂くのは、「商品」ではない。
買って頂くのは、「人間」である。
そのことを学んだのです。
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