「存在」から「生成」へ
ノーベル賞科学者、イリヤ・プリゴジンの著書に、
『From Being to Becoming』という書があります。
『存在から生成へ』と訳されるこの書は、
一つの深遠な問いに対する答えを求め
書かれたものです。
この宇宙137億年の歴史を振り返るならば、
宇宙創成とともに誕生した物質は、
ただ「存在」しただけでなく、
100億年以上の時間をかけて、
物質から生命が「生成」し、
生命から精神が「生成」してきた。
では、なぜ、物質は、
ただ「存在」( Being )し続けるだけでなく、
その中から、生命や精神というものが
「生成」( Becoming )するのか。
その深遠な問いに対する答えを求めて書かれたのが、
この『From Being to Becoming』という書です。
しかし、この書の表題を見つめるとき、我々は、
不思議なことに気がつきます。
たしかに、宇宙の歴史を振り返るならば、
この地球という惑星においては、
「物質」から「生命」が生成し、
その「生命」の進化のプロセスから、
我々人類の「精神」が生成してきました。
しかし、我々の「精神」は、
その「成長」の段階においては、
「自分を超えた何かになろう」との意欲に駆られるのですが、
それが「成熟」の段階を迎えるとき、
「ただ、自分自身であろう」との、静かな境涯がやってきます。
すなわち、From Becoming to Being
その不思議な回帰のプロセスがやってくるのです。
感想を送る
皆さんからのメッセージをお待ちしています。ご意見やご感想をお寄せください。「風の便り」へのご意見や感想は、田坂広志の個人メールアドレスにお送りください。
友達に紹介する
この「風の便り」は、皆さんの友人や知人の方へも、遠慮なく送って差し上げてください。
ささやかな縁と共感の輪が広がるならば、幸いです。
風の便り 配信登録
「風の便り」の配信を希望される方は、こちらをご覧ください。