玄人の「素人らしさ」
プロフェッショナルとは、何か。
そのことを考えさせるエピソードがあります。
ある自治体選挙でのことです。
二人の候補者が争う選挙において、
両陣営の選挙自動車が街中を走りまわり、
住民に対して支持を呼びかけています。
その選挙戦のさなか、ある選挙事務所の前を、
味方の陣営の選挙自動車が、支持を訴えながら、
通り過ぎていきました。
その呼びかけを行う運動員は、
語りのプロフェッショナルらしく、
よく通る声と流暢な話し振りで支持を訴えていました。
しかし、それを聞いた事務所の選挙参謀が、
表情を曇らせ、呟きました。
「あの喋り方では、駄目だ。
あれでは、住民の気持ちが離れてしまう」
しばらくすると、その事務所の前を、
相手陣営の選挙自動車が通り過ぎていきました。
その自動車から聞こえてくる運動員の声は、
草の根の支持者が喋っているらしく、
素人らしい訥々とした声で、支持を訴えていました。
しかし、そのため、その喋り方は、
親しみと共感を覚えるものでした。
それを聞いた選挙参謀が、
悔しそうに、呟きました。
「あれは、本当は、素人じゃない。
実は、プロの役者が喋っているんだ。
あちらの選挙事務所が、一枚上手なんだよ」
このエピソードは、我々に、
大切なことを教えてくれます。
素人の気持ちが分かる。
それが、本当の玄人、
本当のプロフェッショナルなのでしょう。
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