宇宙の「自意識」
私とは、何か。
一つの精神を持った人間であるかぎり、
我々の心の奥深くには、かならず、
この「自意識」の問いがあります。
では、それは、
「誰」が、発した問いなのか。
現代の宇宙物理学が
一つの示唆を、与えてくれます。
138億年前、
この宇宙は、まだ存在しなかった。
ただ、そこには、
「真空」だけが、存在した。
その「真空」が、突如、ゆらぎを生じ、
大膨張と大爆発を起こした。
それが、インフレーション宇宙、
さらに、ビッグバン宇宙と呼ばれるものです。
そして、誕生直後、光に満たされた宇宙は、
徐々に冷え、その内部に、
水素という元素を、無数に生み出した。
その水素が、何億年もの歳月をかけて集まり、凝縮したもの。
それが、夜空に輝く星々、
すなわち、恒星であり、我々の空に輝く、太陽です。
しかし、この宇宙は、この太陽という恒星の回りに、
「奇跡」と呼ぶべき条件に恵まれた、一つの惑星を生み出した。
我々が生きる、この地球です。
なぜなら、46億年前に生まれたこの地球は、
生命の誕生に適した惑星であり、
数億年の歳月をかけて、原初の生命を生み出したからです。
そして、その生命が、さらに40億年の歳月をかけて進化を遂げ、
およそ200万年前、この地球上に、人類を生み出した。
それは、ある意味で、この宇宙が、
「高度な精神」、すなわち「自意識」を生み出した瞬間です。
そして、その「自意識」を持った、あなたや私が、
ときに、満天の星空を見上げ、思います。
この宇宙とは、何か。
それは、実は、我々人間が発した問いではありません。
それは、138億年をかけて、この宇宙が発した問い。
私とは、何か。
その、かぎりなく深遠な、問いなのです。
感想を送る
皆さんからのメッセージをお待ちしています。ご意見やご感想をお寄せください。「風の便り」へのご意見や感想は、田坂広志の個人メールアドレスにお送りください。
友達に紹介する
この「風の便り」は、皆さんの友人や知人の方へも、遠慮なく送って差し上げてください。
ささやかな縁と共感の輪が広がるならば、幸いです。
風の便り 配信登録
「風の便り」の配信を希望される方は、こちらをご覧ください。