ノブリス・オブリージュの進化
「ノブリス・オブリージュ」という言葉があります。
「高貴な人の義務」という意味の言葉。
高貴な身分に生まれついた人間には、
人々に奉仕し、献身する義務がある。
その思想を表した言葉です。
事実、この思想が大切にされてきた英国では、
第一次世界大戦において、
貴族出身の下士官の死傷率が
群を抜いて高かったと言われます。
それゆえ、この言葉を聞くとき、我々は、
その奉仕と献身の精神に
深い共感を覚えるのですが、
貴族という階級を前提とした思想に
ささやかな抵抗を感じます。
しかし、
この言葉を深く見つめるとき、
それが、逆の意味を持っていることに気がつきます。
「高貴な人が自覚する義務」ではなく、
「義務を自覚する人の高貴さ」
その意味に気づくのです。
たしかに、
人々に奉仕し、献身することの義務を自覚した人間には、
不思議な高貴さと、香りがあります。
「ノブリス・オブリージュ」
「義務を自覚する人の高貴さ」
いつか、この言葉が
その意味において使われる時代が、来る。
そして、そのとき、
「義務」という言葉は、
「使命」という言葉と、同じ響きを持つように、なる。
この言葉の余韻の中に、我々は、
その予感を抱くのです。
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