人工知能の気づき
昔、米国のシンクタンクで働いていたときのことです。
その研究所に「人工知能」の研究をしていた同僚がいました。
ある日、「Artificial Intelligence」との表札が掲げてある
彼の部屋に入ると、壁に小さな紙が貼ってあり、
不思議な言葉が書いてありました。
「Artificial Stupidity」
日本語にすれば「人工的な愚かさ」、もしくは
「人工無能」とでも訳すべき言葉が書いてあったのです。
いつも深い思索を感じさせる彼のこと、
それは単なる冗談ではないと感じながら、
その言葉を掲げてある理由を聞くと、
彼は、静かに、こう答えたのです。
人工知能研究が、本当に目指しているのは、
実は、このことなのだよ・・・
そのときの彼の深い眼差しが、その言葉とともに、
心に残っています。
そして、あれから何年もの歳月を重ね、
いま、その言葉が真実であることを、感じます。
もし、人工知能というものが、
本当にその知性を深めていくならば、
いつか、自らの限界に気がつき、
自らの愚かさに、気がつく。
そして、その愚かさも含めて、
自分がこの世界に存在していることの
素晴らしさに、気がつく。
そう感じるのです。
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