「危機」の本質
1972年に、ローマクラブという世界的なシンクタンクが
『成長の限界』という報告書を発表しました。
その中では、人類の将来に対する
次のような警告が語られています。
世界人口、工業化、汚染、食糧生産、資源の消耗などの点で、
現在のような成長が不変のまま続けば、
今後、百年の間に
地球上での成長は、限界に達するであろう。
その結果、最も起こる見込みの強い結末は、
人口と工業力の、突然の、制御不可能な減退であろう。
それから20年後の1992年、
この報告書を作成したマサチューセッツ工科大学のメドウズ教授は、
『限界を超えて』という新たな報告書を発表し、
ふたたび、同じ警告を発しています。
人間が必要資源を消費し、汚染物質を産出する速度は、
すでに持続可能な速度を超えてしまった。
物質およびエネルギーのフローを大幅に削減しないかぎり、
食糧生産量、エネルギー消費量、工業生産量は、
何十年か後には、もはや制御できないような形で減少するだろう。
この二つの報告書を読むとき、我々は、
数十年後に迫った地球規模の危機に対して、
社会システムの変革が、少しも進んでいないことを知ります。
そして、この『限界を超えて』が発表されてから、
さらに数十年の歳月が流れたことを思い起こすとき、我々は、
人類が直面する危機の本質が、何であるかを知ります。
その危機の本質は、
「変革が進まない」ことではありません。
「変革が進まないことを、危機と感じない」
その我々の意識にこそ、あるのです。
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