「インキュベーション」の思想
かつて、ベンチャー育成を重視する政策のもとで、
「インキュベーション」という言葉が
注目されました。
本来は「卵を孵化させる」という意味の英語。
転じて、新しい事業の卵を見出し、
資金、計画、人材、知識、施設など、
事業が育つための条件を整えることによって、
新しい事業を孵化させることの意味に
使われる言葉です。
しかし、欧米で使われ始めた
この「インキュベーション」という言葉。
その意味を考えるとき、我々は、
不思議な逆説が起こっていることに、気がつきます。
それは、東洋思想への回帰。
西洋の機械論的な思想のなかから生まれてきた
この「インキュベーション」という言葉が、
本来、事業というものが持つ「生命力」を信じ、
それをいかに支援することができるかという
東洋の生命論的な思想であることに
気がつくのです。
そして、そのことに気がつくとき、我々は、
この「インキュベーション」における究極の心得もまた、
すでに、東洋の生命論的思想において語られていることを
知ります。
卒啄の機。
雛鳥が、まさに卵から孵らんとする、その一瞬、
親鳥が、卵を突き、雛鳥は殻を破って生まれてくる。
その機の大切さを、
東洋の思想は、すでに語っているのです。
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