漕ぎ続ける日々
昔、山登りをしていた頃を思い出します。
暑い夏の日、登山道の入り口から見上げると、
入道雲を背に、山の頂が遠く輝き、聳え立っている。
何日か後には、その頂に立っている自分の姿を思い、
その目標に向かって、一歩を踏み出す。
しかし、まもなく、道の周りは森に囲まれ、
その頂は視界から消えてしまう。
気がつけば、狭い山道を、重い荷物を背負い、
汗にまみれ、ひたすらに登り続けていく。
ときに、道の険しさと荷物の重さに、足が止まり、
暑さと渇きに、涼しい街の店を、恋しく思い出す。
それでも、目の前の道を見つめながら、
そして、心に刻んだ山の頂を思いながら、
一歩一歩、
ただ、一歩一歩、
足を前に運んでいく。
いま振り返れば、
それは、山登りという営みを超えた、
大切なことを学んでいた時代。
人生という山の登り方を
学んでいた時代であったのかもしれません。
しかし、その大切なことを学ぶのは、
決して、山登りだけではない。
そのことを教えてくれたのは、
波乗りの世界の、伝説的サーファー、
ジェリー・ロペスの言葉。
Keep Paddling.(漕ぎ続けよ)
一日、海にいて、
波に乗っている時間は、数十分。
彼らもまた、漕ぎ続け、
素晴らしい波がやってくる一瞬を
待っている。
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